織田哲郎 6年かけて作り上げた『ワン・ナイト』だが… 「全く悔いのないアルバム」なんて一生完成せず終わるものなのかも(夕刊フジ)

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 【織田哲郎 あれからこれから Vol.74】  私に限らず、多分どんな音楽家の方でも「まったく悔いのないアルバム」なんてものは、誰も作れたことがないんじゃないでしょうか。  私の場合、作った当初はたいていテンションが上がって「最高のものを作ったぞ!」なんて思ったりしますが、時間がたつにつれて、「あそこはもっとああすればよかった、こうすればよかった」といった感じで反省点ばかり目につきます。  そこからさらに10年くらい時間がたってくると、「まあ頑張ってできる限りのことはやったよな」という風に許せるようになってくるのです。そしてごくたまに「このときは結構神がかってたなぁ」と思えたり、逆に「こんな恥ずかしいもの作っちまった自分を許せん」なんて思うものがあったりします。  まぁ結局、悔いが残るからこそ、次はもっと良いものを作ってやろうという原動力につながるのでしょう。  スペインでの事件以来、仕事をセーブして声帯のリハビリに取り組んでいました。そして仕事としてでなく、好きに楽器をいじったり歌ったりという、本来一番楽しかったはずのことに時間を費やしながら、1990年代に鬱やらアルコールやらで濁っていた脳内を少しずつ洗っているような日々でした。  そんな中で生まれてきた作品をレコーディングし始めたのですが、このとき、「いつまでかかってもいいから、人生で一度、後悔の一切残らないものを作ってみよう」と思いました。  各曲の楽器を録音してから、しばらくして別のミュージシャンで録音してみたり、また自分で演奏し直してみたりと、とにかく満足するまでいつまででも続けました。  さらにレコーディングした音をまとめるトラックダウンという作業があるのですが、それをどの曲も何十回、曲によっては100回以上やり直しています。  トラックダウンに入ってからまた楽器を入れ直す、といったことも散々ありました。途中、賽(さい)の河原で石を積み上げているような気分になったものです。  そうして完成したのが2007年にリリースした『ワン・ナイト』というアルバムです。結局6年間、このアルバムに取り組んでいました。結果的に、自分としてはかなり満足のいく、ここが嫌だと感じることがとても少ないアルバムができました。  ところがそうすると面白いもので、その練り上げた感じが少し不満に感じられて、次のア

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(2020/06/30)