本好きが暮らす西荻窪で生き残った最後の書店-東京「今野書店」(nippon.com)

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 緊急事態宣言が解除されるという日の午後。向かったのは、JR中央線の荻窪駅と吉祥寺駅の間、西荻窪駅界隈の商店街だ。小さな居酒屋やレストラン、バーが軒を連ねる。商店街といっても地域のバスが走り、街路灯に昭和の風情が残る。商店街の入り口、ビルの1階に今野書店の緑の看板が見えた。  華やかなファッション誌の表紙がずらりと並び、ときめきを誘う。右手には賞にノミネートされた文芸作品を始め、話題の本が積み上がる。新しい本独特の匂いを漂わせている。  オレンジ色の照明、低い音で流れるジャズ、靴音が響かないカーペットの床。アクリルや白の展示棚はあたたかな空間に透明な輝きを加えている。  あちこちの棚の前で客が本を読みふけり、レジ前にはソーシャルディスタンスを保った列ができていた。  コロナ禍、本を求めて訪れる人は増えた。 「お客様の数があまりに多いときには、入場制限をかけた日もあります」  地下の小さな事務室で社長の今野英治さん(59)が言った。 「営業を問い合わせる電話がひっきりなしにかかってきて、開けてくれてありがとうという言葉までいただきました。ああ、本屋は必要とされているんだなと実感できて、うれしかったです」  3月から売り上げは前年比プラスが続いていて、4月に緊急事態宣言が出た後も、営業時間を短縮して店を開けた。  通常は朝10時から夜11時まで、18人のスタッフが2交替で勤務する。一日の平均来店客数は1500~2000人ほど。地下のコミックフロアと合わせると在庫数は8万冊。専門書をのぞく全てのジャンルを揃え、 NHKテキストの年間購読契約数は、個人経営の書店で日本一を誇る。西荻に暮らす作家の姿を見かけるのはここでは日常のことだ。 『来店客の3割が購入すれば“よい書店”。4割ならば“すばらしい書店”』  書店の良し悪しを測る業界の目安だ。今野書店では4割近くが購入するという。 「家族でお越しになったとしましょう。小さいお子さんからご老人まで、ご家族お一人お一人に向けて満遍なく本が揃っている。そんな普通の書店をしっかりやっていきたいと考えて店づくりをしてきたのがよかったのかもしれません」  かつて商店街には、雑誌、新刊書籍、文庫本、漫画から学習参考書までひと通り揃う町の書店があった。今野さんの言う「ふつうの書店」だ。  そうした商店街の書店は次々に姿を

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(2020/06/30)