香港「国家安全法」で激化「米中新冷戦」と「一国二制度」の変質(新潮社 フォーサイト)

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   香港の「国家安全維持法」が中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会で6月30日に可決、成立した。香港返還の記念日である7月1日に、同法は香港で施行される見通しだ。  中国の改革・開放や米中接近の象徴でもあった香港の「一国二制度」の大きな変質は避けられず、同法案の成立に懸念を抱く米国など西側諸国の反発は確実で、香港問題が米中「新冷戦」の最前線となる様相が濃くなっている。 ■香港基本法の「抜け穴」  1997年に英国から中国へ返還された香港は、「一国二制度」という制度設計のもと、「高度な自治」を50年間にわたって保証されていた。行政、司法などの独自性を支えるのが「香港の憲法」と呼ばれる香港基本法で、同法によって、英国式のコモン・ローに基づく香港と、社会主義体制下の中国は、別々の世界に分けられているはずだった。  ところが、今回の国家安全法は、そんな香港と中国の境界を易々と乗り越えて、「国家安全」という錦の御旗で、香港に対する中国の支配力を直接的に及ぼさせる。従来の「一国二制度」の構想を覆してしまう恐れが強い。  中国側にとっては望ましい習近平流の「一国二制度」かもしれないが、香港社会に「国家安全法は香港の一国二制度を踏みにじり、死に追いやるものだ」(民主派の公民党立法会議員・陳淑荘氏)という見方が広がるのも無理はない。  中国が強引に見える手法で香港へ国家安全法を導入できるのは、香港基本法の抜け穴とも言える部分を活用することによる。香港人自身を含めて、多くの人が、今回の導入を予想できなかったと述べているのは、たとえ法律上は可能であっても、まさかそんな手は使ってこないだろうと思わせる「裏技的」なやり方によるものだったからだ。  香港基本法には18条2項に、 「全国的な法律は、本法付属文書3に列せられたものを除いて、香港特別行政区で実施しない。本法付属文書3に列せられた法律は、香港特別行政区が現地で公布するか立法化して実施する」  と書かれている。  全国的な法律とは、香港独自の法律ではなく、中央が制定する法律という意味である。この条項は本来、国防や外交に関わり、しかも緊急度の高い余程の事情がない限り、「全国的な法律」は香港では実施しないという抑制のためのものだったのだが、今回はその立法趣旨とは逆の方向で使われる形となった。 ■立法会選挙に

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(2020/06/30)