社会が揺れ動いた90年代の韓国を舞台に、少女の危い内面を描いた映画『はちどり』が心を打つ。(Pen Online)

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『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を席巻した今年、韓国で最も権威のある映画賞の青龍賞でポン・ジュノをおさえて最優秀脚本賞を受賞した『はちどり』。1981年生まれのキム・ボラ監督が、自身の少女時代を反映させて撮った青春映画です。 【映画情報詳細】『はちどり』 舞台となっているのは、94年のソウル。両親と兄姉と集合団地で暮らす14歳のウニは、家庭にも学校にも馴染めず、息がつまるような毎日を送っています。別の学校に通う親友や男友だちはいても、父親がいつも怒鳴り、忙しく働く母が疲弊している家族の中にウニが安らげる居場所はありません。自分に無関心な大人に囲まれていると感じていた彼女の前に現れたのは、漢文塾の女性教師、ヨンジ。ウニは少しずつ彼女に悩みを話し、心の内側を見せていくようになります。 家父長制や学歴至上主義に苦しめられ、女性がのびのび生きられるとは言い難い社会のなかで、ウニを傷つける兄もまた、そうしたプレッシャーを受けている犠牲者なのかもしれません。学校と家庭と塾が世界のすべてであるウニが初めて出会った、自分が心を許せる大人であるヨンジ。理不尽な日々の中で人生の美しさと不思議を伝え、ウニの世界を押し広げようとするヨンジの言葉は、すーっと心の奥底に届くような優しさと力強さに満ちています。 少女が日常の中で感じるどうしようもない怒りやささやかなジェラシー、ままならない現実と自分への苛立ち。透明感と緻密さが同居した映像でウニの周りで起こったことをスケッチしているのですが、まるではちどりの羽ばたきのような、彼女の心の揺らぎに寄り添っているがゆえにどこか危うく、目が離せない緊張感が続き、しかしそれがこの映画を魅力的なものにしています。94年にソウルで起きた悲劇的な事故、聖水大橋崩落のニュースを織り込みながら、パーソナルな物語から社会の断面を見せてくれる『はちどり』は、韓国映画の勢いと多面性を伝えてくれる1本であることに間違いありません。

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(2020/06/29)