相澤陽介──今はマインドチェンジのとき【GQ JAPAN連載特集:希望へ、伝言】(GQ JAPAN)
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私自身、イタリアでの仕事が多く、また中国製のスポーツブランドとの協業もあるので、他の日本人よりも早く危機感を持っていたかもしれません。具体的には1月の末、パリのショーの後にフィレンツェに訪れた時にまず中国からの変化を感じ、現地でも少し不穏な空気はありました。
その後のイタリアでの惨状を考えるとそこから始まっているように思えます。昨年からデザイナーを務めているLARDINIのスタッフとはその後も密に連絡を取り合い徐々にイタリア、および欧州での危機的状況がリアルに伝わって来ていました。例えば、ハンティングワールドでお世話になった工場の方が感染し入院している話や、関わった全ての会社、工場での操業がストップし、そこから今日まで変わりなく物作りは止まっています。6月のパリのショーに関してはオフィシャルの発表がある前からある程度覚悟していました。
私自身約20年間洋服という媒体を通して、当たり前に物作りの高みを目指した活動をしてきて、今初めて物作りができない状況に戸惑っています。しかしながら、ファッションというものが、産業として、ビジネスでの競争を余儀なくされていた現状の中で、悩みがあったことも事実としてあり、なぜ洋服を作るのか? ファッションとは、デザインとは誰の為に存在するのか? という疑問の中で雑念を消す為に邁進してきたことは否めません。環境が整わない中、また生命という守るべきものを肌で感じた時に、本来の意味で初心に帰る良いタイミングだと考えています。
テキスタイルの歴史で見れば元来、生活に密接に関わり、防寒の為、また物を包み運ぶ為のプロダクトとして発展し、そこから工芸としての装飾などが加わり素晴らしい芸術へと発展してきました。その本来の意味がはたして今のファッションには存在するのか?また現状のタイムラインでの物作りにはビジネス以上に必要な物があるのか?デザインと物作り(例えば産地や工場の環境など)のバランスは今の状態でいいのか?答えがでない問題ではありますが、日々悩む時間となっています。
学生時代に伝統工芸での染織を学び、原毛から糸を作り、自分で染め、織り機に糸を通し1M生地を織るのに何週間もかかって生地を作ってきました。シンプルに物を生み出す時間軸を考えた良い期間でありましたが、今そのプリミティブな物作りに喜びを感じた思いが薄まっていたかもしれません。
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