フィレンツェの伝統スポーツ「カルチョ・ストーリコ」 コロナで2020年は開催の危機(ナショナル ジオグラフィック日本版)
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イタリアの歴史的な都市の一つフィレンツェには、「カルチョ・ストーリコ」という伝統的な競技がある。イタリア語で「歴史的フットボール」を意味するこの競技は、フィレンツェの歴史的な町を4つの地区に分け、それぞれの地区を代表する4チームが、毎年数千人の観客の前で優勝をかけて戦うトーナメント式のイベントだ。ラグビーにやや似ているが、こちらは古代広場に設置された巨大な砂地のフィールドの中で、時代衣装を身に着けた選手たちが素手で殴り合い、大乱闘を繰り広げる様は、かなり独特だ。
ギャラリー:2020年は延期か、フィレンツェの伝統競技「カルチョ・ストーリコ」 写真11点
毎年6月24日の聖ヨハネの日、フィレンツェの人々は決勝戦に先駆けて行われるパレードを楽しみに待つ。4つのチームには、それぞれチームカラーが割り当てられている。サンタ・クローチェはアズーリ(青)、サンタ・マリア・ノヴェラはロッシ(赤)、サント・スピリトはビアンキ(白)、そしてサン・ジョバンニはヴェルディ(緑)だ。チームの応援は市民の義務のようなものであり、勇気と誇り、目的をもってチームカラーを代表するカルチアンテ(選手)に選ばれることは、この上ない栄誉なのだ。
カルチアンテには、レストラン経営者やベーカリーの店主、建築現場の作業員、会社役員もいる。しかし、ひとたびフィールドに足を踏み入れれば、職業も年齢も関係ない。彼らに共通するものは、このスポーツへの愛のみだ。その昔、優勝賞品は食用の子牛1頭だった。それが今では、無料のディナーと記念の垂れ幕に変わった。出場選手たちは、金銭的報酬もトロフィーも受け取らない。脳震とうになっても、血を流し骨が折れようとも戦い続けるのは、それがフィレンツェの人々が昔からやってきたことだからだ。
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で、20年6月の開催は絶望的となり、フィレンツェの町は打ちのめされた。だが、すぐに気を取り直した人々は、完全にキャンセルするのではなく、形を変えてでも開催できないかと知恵を出し合い始めた。