安田菜津紀──心の中で手を携え続けることはできるはず【GQ JAPAN連載特集:希望へ、伝言】(GQ JAPAN)

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想田和弘監督の『精神0』を、監督との対談前に拝見しました。前作となる『精神』(2008年)では、外来の精神科診療所「こらーる岡山」に通う患者さんたちや山本昌知医師の日々を描いていました。「病気ではなく人を看る」「本人の話に耳を傾ける」「人薬(ひとぐすり)」をモットーにする山本医師の元には、様々な生きづらさや孤独を抱えた人々が集ってきます。そんな山本医師が82歳にして突然「引退」することになった、というのが『精神0』のはじまりです。「人を看る」ことを大切にしてきた山本医師が、患者さんたちにとってどれほど大切な「生命線」であったか、一人ひとりの表情が切実に物語っていました。そして、精神医療に捧げた人生のその後に待っていたのは、妻・芳子さんと2人で過ごす、新しい生活でした。芳子さんの存在は、「内助の功」のような、「主である夫と補佐する妻」のような構図ではありません。彼のこれまでの歩みが、芳子さんとの「共生」だったことが温かく、じんわりと伝わってきます。 この映画の素晴らしさは、内容そのものだけではなく、公開のプロセスにもあります。今、各地の映画館が“自粛”の要請で閉館せざるをえないのが現状です。ところが映画の公開を延期したり、WEBで公開したりするだけでは、劇場には利益がなく、ともすると次々とつぶれかねない状況です。 そこで想田さんたちは、オンライン上に「仮設の映画館」を作りました。『精神0』は5月2日からオンライン配信されますが、視聴者が払う「鑑賞料」の収益を、通常の公開と同様、劇場にも分配するのです。観る側はこのサイトから、どの劇場から「観る」のかを選び、その劇場に利益が届く仕組みなのです。もちろんカルチャーへの公的支援がまずあるべきですが、家などから映画を鑑賞できるだけではなく、劇場の応援にもなるこの取り組み、他の映画にも広まってほしいと思います。http://www.temporary-cinema.jp/seishin0/ ※その後、『精神0』は劇場での公開も始まりました。詳細は公式HPをご覧下さい。 https://seishin0.com/

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(2020/06/25)