【新刊紹介】北朝鮮の実態を知るのに最適の書:城内康伸著『金正恩の機密ファイル』(nippon.com)

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著者は1993年のソウル支局勤務を皮切りに、ソウル、北京でつごう14年間、東京新聞の特派員を務めるなど、朝鮮半島ウォッチャーとして25年のキャリアがある。本書の内容は、取材の過程で入手した1400件におよぶ北朝鮮の機密文書や内部資料、音声記録がもとになっており、それだけ信ぴょう性が高い。 2016年5月の党大会と同じ頃に行われた、秘密警察(国家安全保衛部)による講演会の録音記録によれば、金正恩暗殺未遂事件がいくつもあったことが報告されている。それも生活苦から体制に不満をもつ一般人の仕業である。 その記録文書には、党の規律が揺らいでいる様子が具体的に記されている。人民の間では、禁じられている韓国の映画・ドラマや音楽が密かに流行し、当局の摘発が続いている。はては強盗、売春など犯罪行為の頻発まで。北朝鮮は、外貨を稼ぐために覚せい剤を輸出していたが、いまでは薬物使用が国内に蔓延し、密売に手を染める者が増大しているという。 映像でよく見る軍事パレードでは、朝鮮人民軍は一糸乱れぬ統制が取れているかのようだ。しかし、著者が入手した9000ページにおよぶ「235軍部隊資料」によれば、組織は荒廃の一途をたどっているというから驚きだ。 軍隊でも食糧不足は深刻で、兵士が民家に押し入って略奪を繰り返す。金を稼ぐために燃料、鉄、セメントなどの装備品を闇で横流しする。地方では軍を脱走する者も後を絶たない。現場の指揮官からは「このままでは戦えない」と悲痛の声があがるが、聞き入れてはもらえない。 そんな窮状に陥っているのに、金正恩は核武装に邁進する。それはなぜか。本書によれば、2018年以降、米韓との対話ムードを演じているその裏で、敵視政策に変化は見られず、内部資料には「トランプの野郎」「米帝」、韓国を指して「傀儡」といった文言が躍る。著者は、「北朝鮮は今もなお、朝鮮半島全体を北朝鮮の最高指導者の支配下に置くことを最終目的としている」と結論づける。核兵器の所有によって、それが可能になる。 本書から、非核化など幻想にすぎないことを、われわれは学ぶべきだろう。

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(2020/06/23)