現代の華麗なる浮世絵師 「安野モヨコ展 ANNORMAL」(CREA WEB)
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「安野モヨコ展 ANNORMAL」
思えば漫画家というのは、表現者として少々、バケモノめいた存在ではないでしょうか。
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なぜというに、相反するふたつの表現能力を併せ持っていないと、人を夢中にさせる作品を生み出せないからです。
すなわち、先が知りたくなって「ページをめくる手が止まらない!」と読者を嘆かせるほどの、ストーリーテラーとしての才能。
そして、「このコマからもう動けない!」と読む側の眼を釘付けにしてしまうような、絵描きとしての圧倒的な腕前。この両の才能をともに高次元で有しているのが、一流漫画家というものなのです。
掲げた絵は、そんな巨大な才を30年にわたって発揮し続けてきた、ひとりの漫画家の手によるもの。
「あ、この絵柄は!」と見覚えのある向きも多いのでは? そう、描き手は安野モヨコです。
恋愛に恋愛してしまった女性の暴走っぷりを描く漫画「ハッピー・マニア」。週刊誌編集部を舞台に、働くって何だ? と問いかけ「働きマン」。魔法と夢がいっぱいの少女漫画「シュガシュガルーン」。鎌倉の自然の中で古き佳き世界が展開する「オチビサン」……。
彼女のキャリアは、幾多のヒット作で彩られています。
一つひとつ振り返ってみるに、私たちはいつだって、驚嘆に満ちたストーリーと共感を呼び起こす絵、双方に魅せられ続けてきたのだと気づかされます。
とりわけ安野モヨコの絵の力、これはやはり強烈です。人好きのするキャラクター、動感に溢れる人物のポーズ、センスが光る背景描写に至るまで。
ひとコマずつに、「漫画における絵とはどうあるべきか」が考え尽くされ、表現されています。
掲出作に描かれているのは、「さくらん」の世界です。これは、江戸時代の吉原に生きた花魁「きよ葉」を主人公に据えた、絢爛豪華かつ凄惨なお話。
絵画表現として眺めれば、うなじやフェイスラインをかたちづくっている、この力強く張りのある描線はどうでしょう。
一転、髪の一本ずつは、どこまでも繊細に描き込まれています。しどけない和服の色の合わせも美しい。
「さくらん」の舞台となっている江戸時代といえば、浮世絵の全盛期。吉原の光景を画題にした作も多く残っています。
それらと比べて、安野モヨコによる「現