死が美しすぎる音楽で彩られた「ウェルテル」に生き抜く強さを学ぶ(GQ JAPAN)

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コロナ不況が当面続くことは、残念ながら確実視されている。失業率の増加も予想され、それに関して日本には、失業率が1ポイント悪化すると自殺者が1000人以上増える、という統計がある。しかし、昔から「命あっての物種」というように、生きていればきっと、いいこともある。 主人公が自殺を遂げるオペラで「蝶々夫人」と並ぶ名作が、フランスの作曲家マスネの手になる「ウェルテル」だろう(1892年初演)。ドイツの文豪ゲーテが25歳の時に出版した書簡体小説『若きウェルテルの悩み』(1774年刊)が原作なのは、いうまでもない。婚約者がいるシャルロット(小説ではシャルロッテ)への叶わぬ恋心を抱いたウェルテルが、絶望して拳銃自殺を遂げるまでが描かれるのは、小説もオペラも同じである。ただ、オペラの場合は、極上の音楽を得て咄嗟の衝動は劇的に、事切れるにいたる場面は抒情的かつロマンティックに描かれ、総じて死が美しく彩られている。 原作がベストセラーになったときは、まねして自殺する若者が増え、社会現象になったと伝えられている。しかし、芸術は死への先導者ではない。この美しすぎるオペラは(もちろん原作も)、むしろ生への希望を引き出す作品である。自殺者が増えるというアナウンスもあるコロナ禍において、芸術美に浸りながら死を遠ざける方法を考えてみたい。 というのも、自粛生活で楽しめるように過去の講演記録映像を届けてきた新国立劇場「巣ごもりシアター」が、最終作として6月19日15時から26日14時まで配信するのが、昨年3月に同劇場で上演された「ウェルテル」なのだ。演出家、ニコラ・ジョエルによる色彩のあわいが美しい舞台上で、輝かしくも抒情的な声で、世界の一流歌劇場を席巻するアルバニア生まれのテノール、サイミール・ピルグがウェルテルになりきった、必見の上演である。

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(2020/06/21)