少年アヤ──抵抗せよ! ろくでもないことが起きる明日に向けて【GQ JAPAN連載特集:希望へ、伝言】(GQ JAPAN)

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毎日昼ごろ目を覚まし、業務用スーパーで買ったパスタかうどんをたべる。足りなかったらトーストも。それから彼と交互にシャワーを浴びて、日課の散歩に出る。いい天気だとうれしい。 だいたい1時間ほどの道のりを、なるべく人通りの少ないところを選んで歩く。おかげで好きな路地や、林道への近道をたくさん発見することができた。季節はみるみる動いていて、主役になれないような花や、雑草たちもいきいきしている。空もあざやか。彼はかわいい。ほんの一瞬だけど、まるで永遠につづく春休みの最中みたいな気分になる。 いくつかある公園には、いつも大勢の人がいる。子どもも、若者も、老人もいる。ぼくは足早にその横を通り過ぎながら、ちょっとーー、ソーシャルディスタンスーー、と思う。いまにしぬかもしれないし、殺すかもしれないという自覚が、あまりにも欠如している顔、顔、顔。 しかし一方で、たのしげにあそぶ彼らの様子に、猛烈な親しみを覚える。そしてほんの数カ月前、友人といった焼き鳥屋で、ぜんぜん知らない女の子たちと恋バナをしたことが、途方もないほど昔のことのように思い出される。 そうだよね。みんなほんとは、人のいるところにいたいよね。だめだけど。だめなんだけど。 帰りはスーパーに寄って、だいたい2日ぶんの食材を買い込む。ぼくは入り口に置かれた除菌スプレーを手に塗りたくりながら、呼吸を最低限におさえ、すばやく品物を選んでいく。お菓子コーナーでのんびりしている彼を、はやくはやくと何度もせっつく。そういう自分に疲れる。 家に帰ったら、すぐに手を洗って、服を着替えてから夕飯をつくる。スーパーに、むき出しのまま置かれていた野菜を、しつこく、しつこく洗いながら、ふと店員さんたちのことを思う。 レジにいたのは、学生さんっぽい若者や、母親とおなじくらいの女の人たちだった。ぼくが一刻もはやく脱出したくてたまらならなかったあの空間に、ずっといなければいけない人たち。他人の暮らしを守るなんて大義を、1000円くらいの時給で背負わされている人たち。その人たちを、踏み台にしてつくる、お味噌汁。炊き込みご飯。鳥の唐揚げ。 頭がぐちゃぐちゃになる。 希望という言葉は、いますごく必要で、すごく重いものになってしまった。ウイルス自体もおそろしいけれど、なんといっても政治がひどい有り様だから(マジでふざけんなよ)。そしてそんな政治

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(2020/06/21)