急務のWTO改革 全加盟国が身を切る覚悟で 外務省 安部憲明国際貿易課長(産経新聞)

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 外務省で世界貿易機関(WTO)を担当する安部憲明国際貿易課長が、WTO改革をめぐる問題点や改革の方向性について寄稿した。   WTOの停滞を語る声がかまびすしい。貿易立国である日本は、自由で公正な国際ルールを守り、相手にも求めることで、安定的で透明性ある取引を行い、経済成長と繁栄を勝ち得てきた。それだけにWTOの今の姿は人ごとではない。  WTOの制度疲労は明らかだ。2001年からの多角的貿易交渉(ドーハラウンド)が停滞し、新興国の台頭やデジタル経済の進展に対応できていない。ルールの空白や解釈の曖昧さが生じ、補助金などの国内措置をWTOに通報しない国や、加盟時の弱者優遇を手放さない「自称・途上国」の跋扈(ばっこ)を許している。  昨年12月には、貿易紛争を最終的に裁定する上級委員会が機能停止に追い込まれた。米国が新たな委員の選任を認めなかったためだが、背景には「上級委は本来の権限を越えて判断してきた」との批判がある。  被災地の水産物に対する韓国の輸入規制措置に関し、日本も上級委改革の必要性を痛感させられた。  現在のWTOには、補助金やデジタル経済をはじめとするルールについて(1)交渉・策定(2)ルール順守と監視(3)紛争解決-という3機能に不全がある。紛争解決機能は速やかに回復すべきだが、同時に、鎖のように互いにつながったルール作りと監視の側面にも手を付けなければならない。三位一体の改革が必要だ。  そこでWTO改革に取り組む実務者の視点を挙げたい。  第1に、164にまで増えた加盟国の自己改革という点だ。全会一致原則は、一国の反対ですべて台無しになる。全加盟国は公共益のため身を切る思いで接点を見いだす覚悟が必要だ。  第2に、WTO改革の自己目的化は禁物だ。自由貿易体制を支えるための二国間などでの重層的な取組も有意義だ。日本は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に戻るよう米国を促しつつ、日EU経済連携協定(EPA)や日米貿易協定を通じ、世界に自由貿易の血液を循環させている。  第3に、WTOの満身創痍を米国のせいにする見方は一面的だ。規定の90日期限を超えた審理の続出、任期終了後も審理を続ける上級委のあり方に不満を抱くのは米国だけではない。  トランプ米政権の対応は、多国間協調に背を向けるように見えて、むしろ改革の根深い原因に手当てす

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(2020/01/21)